
東京大学 情報理工学系研究科 コンピュータ科学専攻の院試・合格体験記|対策とスケジュール
東大院 情報理工(コンピュータ科学専攻)合格体験記|日程・対策・ロードマップ
院試は情報戦です。
外部受験で一番しんどいのは、「何をどこまでやればいいか」が見えないことだと思います。
私は、一次情報(募集要項・入試案内書・TOEFL提出要項・過去問公開ページ)を最初に固めて、そこから逆算して勉強計画を作りました。
募集要項の内容に変更がある場合は研究科の入試情報ページに掲示すると明記されているので、この記事は「各年度で仕様が変わり得る」前提で読んでください。
この記事では、東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻の科目・日程・書類の要点を整理したうえで、私の合格体験記をお送りします。
- 院試勉強開始時期:受験前年の12月
- 合格先:東京大学情報理工学系コンピュータ科学専攻、東京科学大学情報理工学院情報工学系
- 学部:東京科学大学工学院機械系
試験概要と参考スケジュール
東大情報理工の修士は、まず提出書類による書類選考を行い、その合格者に筆記試験、さらに必要に応じて口述試験、という流れです。
WEB出願
5月末〜6月上旬
(PDFアップロード)
書類選考結果
7月下旬
(TOEFLスコア到着期限)
筆記試験
8月中旬
(数学・専門科目)
口述試験
8月下旬
(オンライン)
出願
外部受験生にとって、出願で一番大事なのは、“受験資格を確実に取り切る”ことです。
出願手続は、WEB出願システムで願書を作成し、必要書類はPDF化してアップロードする方式です。また提出書類として、成績証明書(卒業見込みは出願前2か月以内発行などの条件付き)等が指定されています。
【外部受験生向け】めちゃくちゃ重要なポイント
- コンピュータ科学専攻(修士)は夏入試のみ。冬入試では募集しません。
- 理学部情報科学科以外からの出願者は、願書提出前に志望研究室の教員少なくとも1名に連絡を取ることが望ましいとされています。(外部生は基本該当)
- 志望研究室は最大第6希望まで入力し、研究計画書を提出します。書類で落ちたら、勉強全てが無に帰します。
英語
英語について「どれくらい取るべきですか?」って聞かれがちですが、東大情報理工では、英語はTOEFLの成績を利用し、筆記試験は行いません。スコアの目安は……。
私は、参考書として『TOEFLテスト英単語3800 4訂版』という単語帳を使用して単語中心に勉強しました。
専門科目
まず、試験科目です。
コンピュータ科学の数学は「線形代数・解析(微積分や常微分方程式など)・確率統計」の3分野から出題された3問に解答するものとなっています。
次に、コンピュータ科学専攻の専門筆記。
専門筆記は「約4問出題・全問解答」です。出題分野は、以下の11分野。
情報数学、数値計算、離散数学、アルゴリズムと計算量、形式言語、論理学、プログラミング言語論、コンピュータアーキテクチャ、オペレーティングシステム、デジタル回路、機械学習
(さらに、出題にCまたはJavaを使用する場合もあります)
ここまで読んで、「範囲広すぎん?」って思った人。私もです。
そこで私は、公式の出題範囲と参考書をそのまま対応づけて、効率化しました。
コンピュータ科学専攻は、受験勉強の参考となる書籍リストも公式に公開されています(分野別に参考文献が並んでいます)。私はこの公式リストを勉強の軸として勉強していました。
私が重要だと思うのは、「範囲が広い=全部を同じ深さでやる」じゃないということです。専門筆記は約4問全問解答なので、一つの分野を捨てるより、頻出分野を取り切って、残りは最低限の解答能力を確保する方が戦いやすいイメージです。
公式の参考図書リストはこちら:
東京大学 大学院 情報理工学系研究科
情報数学(いわゆる「情報のための数学」)
何を見られる?
- 定義・記号・式変形を手早く扱えるか
- 抽象を計算に落とし込んで処理できるか
勉強のコツ
- 定義→例→反例の順で覚える(定義だけ暗記が一番事故る)
- 典型テーマは取り組み量が全て
使う参考書と使い方
- 『線形代数 : キャンパス・ゼミ』(+必要なら演習版)
→ 例題を読んで「その場で同型問題を作って解く」。 - 『微分積分 : キャンパス・ゼミ』
→ 公式暗記より「置換・評価・収束」の定型手順を身体に入れる。 - 『大学基礎数学 確率統計キャンパス・ゼミ』
→ 分布・推定・検定の式を“言葉で説明”できるようにする。
数値計算
何を見られる?
- 誤差を雑に扱わなずに、正確に
- 反復法の「なぜ収束する(しない)?」の感覚
勉強のコツ
- 公式を覚えるより、「入力→更新→停止→誤差評価」の型で整理する
- 反復法は、1度手計算で回すこと(これだけで理解度と習得スピードが段違いです)
使う参考書と使い方
- 『詳解大学院への数学 改訂新版―理学工学系入試問題集―』(通称:黄色本)
→ 院試っぽい計算問題をまとめて回せる問題集。証明より計算で押す練習に寄るので、短期で点を作りやすい。
離散数学
何を見られる?
- 集合・関係・写像・グラフを同じ言語で扱えるか
- 場合分け・帰納法・不変量のような思考の型を持ってるか
勉強のコツ
- 「定義→小題の演習→一般化」で詰め込む
- 証明は長編より、短い命題を量で回すのが良い
使う参考書と使い方
- 『はじめての数理論理学 証明を作りながら学ぶ記号論理の考え方』
→ 簡単な説明で、論理記号〜自然演繹の入口まで。問題量も多めで反復に向くタイプ。
アルゴリズムと計算量
何を見られる?
- アルゴリズムの正しさ/計算量をセットで書けるか
- DP・グラフ・探索の典型を落とさないか
勉強のコツ
- 「問題→状態→遷移→初期値→答え→計算量」をテンプレ化(DPはこれだけ)
- グラフは目的別の道具をインプットし、状況に応じた対応を可能にしておく
使う参考書と使い方
- 『世界標準MIT教科書 アルゴリズムイントロダクション第4版総合版』
→ 分厚いけど、章末問題まで含めて辞書にも演習にもなる。探索・ソート・DP・グラフを計算量とセットで整理、は超正攻法。
形式言語
何を見られる?
- 形式モデルを暗記じゃなく、関係(包含・等価・限界)で理解してるか
- DFA/NFA、CFG/PDA、TM の順序を辿れているか
勉強のコツ
- 一本道暗記が一番強い(DFA/NFA → CFG/PDA → TM → 計算不能)
- それぞれで「何が表現できるorできない」を1行で言えるようにする
使う参考書と使い方
- 『例解図説オートマトンと形式言語入門』
→ 図と例が多い入門寄りで、章立ても上の“一本道”に沿っていて覚えやすい。
論理学
何を見られる?
- 記号にビビらず、手順として証明できるか
- 何が仮定で、どこで使ったかを答案に落とせるか
勉強のコツ
- まずは自然演繹(導出)をパターンとして覚える
- 証明の型は、短い問題を100本が近道
プログラミング言語論
何を見られる?
- 型・意味論・計算モデルを説明できるか
- 定義と推論規則が重要(雰囲気で書くと事故る)
勉強のコツ
- (簡単な言語)→(型付け)→(評価規則)→(性質)の順で慣れる
- 記述は「定義→例→性質→反例」の型で行うと安定する
コンピュータアーキテクチャ
何を見られる?
- 命令実行/パイプライン/メモリ階層を説明できるか
- 速くする工夫を、ボトルネックから語れるか
勉強のコツ
- IF→ID→EX→MEM→WB を言葉で説明できる状態にする
- メモリ階層は 局所性→キャッシュ→ミスのコスト の順で整理する
使う参考書と使い方
- 『実践 コンピュータアーキテクチャ(改訂版)』
→ 目次が“論理回路〜Verilog〜プロセッサ〜FPGA実装”まで繋がっていて、説明力がつくタイプ。
オペレーティングシステム
何を見られる?
- プロセス/同期/メモリ/ファイルを骨格から理解してるか
- 具体例(デッドロック、ページ置換等)を答案に落としこめているか
勉強のコツ
- 章ごとに「目的→仕組み→代表アルゴリズム→典型事故」でノート化する
- 同期はクリティカルセクション→セマフォ→デッドロックの順で固める
使う参考書と使い方
- 『オペレーティングシステムの基礎 -ネットワークと融合する現代OS-』
→ OSの歴史から基礎・応用までを扱い、章末演習もあるタイプ。
デジタル回路
何を見られる?
- 組合せ→順序回路への移行を理解しているか
- 最小化・状態遷移・タイミングの基本が落ちてないか
勉強のコツ
- 「真理値表→簡単化→順序回路」 の順序で理解する
- 状態機械は「状態数→符号化→遷移→出力」までをテンプレにしておく
機械学習
何を見られる?
- モデル・目的関数・推定を理解できているか
- ガウス・混合・ベイズ周りの基礎計算ができるか
勉強のコツ
- まずは 生成モデル(確率モデル) で地盤を作ると速い
- どの手法でも「何を仮定して、何を最大化/最小化してるか」を言えるようにする
使う参考書と使い方
- 『TokyoTech Be-TEXT 統計的機械学習 生成モデルに基づくパターン認識』
→ 最尤→混合ガウス→ベイズ推定…の流れが院試向きです。
東大情報理工CS 合格までのロードマップ
院試は「早く始めた人が勝つ」試験ではありません。
正確に言うと、正しい順番で積み上げた人が勝つ試験です。
ここでは、12月から本番(8月)までの流れを、実際にやってみて「これは正解だった」と思えたもののみまとめます。
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1
12月〜2月:事故らない土台作り【英語+数学】
まずは“受験資格の事故”(スコア不足や有効期限切れ)を消す期間です。英語は伸びが緩やかで継続して感覚を養うことが重要なので、早く始めておくだけで精神が安定します。数学は完璧主義ではなく、定義の確認や典型計算など、反射神経の回復に努めましょう。
-
2
3月:全体感のイメージを作る月【数学+専門科目】
数学は継続しながら、専門科目に触れ始めます。ここで重要なのは、深掘りではなく「全体像の把握」。目次を読むだけでもいいので、「どこが山で、どこが平地か」という全体感を知りましょう。分からない箇所があって当然です。
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3
4月:専門科目を厚く(数学は落とさず継続)
専門を本格化させます(アルゴの体系化、OSの基礎、アーキのパイプライン等)。ただし、ここで数学を完全に止めてしまうのは危険です。週に数回でもいいので、計算力は維持しましょう。
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4
5月:専門の穴埋め+再点検
用語は知ってるけど説明できない、アルゴの計算量をミスる、といった小さな穴を潰します。過去問に入る前最後の準備期間ですが、地力がついていない状態での過去問演習は浪費になるため、まだ本格的には回しません。
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5
6月:時間感覚を養う月【過去問開始】
目的は点数ではなく、「解く順番」「捨て問判断」「1問あたりの時間感覚」を固定すること。最初はボロボロでも良いので、時間配分をとらえながら間違えた問題を徹底的に復習します。
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6
7月:再現性を上げる演習月
意識するのは「同じ形式なら、同じ点が取れるか?」。偶然の正解は意味がありません。計算は安定しているか、記述は最後まで書けているか、焦ったときでも崩れないか。再現性がすべてです。
-
7
8月:実践練習
量は増やさず、実戦形式での演習を行います。制限時間を守る、解く順番を固定する、見直し時間を確保する。ここで血迷って新しい参考書は開かないように。一つ一つの過去問を最大限吸収しましょう。
口述試験
口述試験は、専攻入試案内書で「オンライン」で行われます。口述で私が意識したのは、結局これだけです。
「研究計画書に書いたことを、矛盾なく・具体で・短く説明できるか」
想定質問は、公式にリスト化されているわけではないので「私の想定」になりますが、対外部生は特に以下が来る前提で準備しました。
- なぜその研究室(第1希望)か:研究テーマの接続(その研究室の最近の研究と、自分の経験・関心の接点)
- 修士で何をやるか:2年で終わる設計(何を作って/何を評価して/何を成果にするか)
- 専門の基礎確認:筆記で出た範囲の「言葉の定義」や「計算の意味」を説明できるか
また、外部生にとっての裏テーマは「研究室コンタクト」だと思っていて、公式にも“願書提出前に教員へ連絡することが望ましい”と書かれているので、私はここをサボりませんでした。
過去問の解答解説
最後に過去問です。ここは私も声を大にして言いたい。
「過去問は、最強の教科書です。」
情報理工学系研究科は、過去5年分の筆記試験問題を公開しており、一般教育科目(数学)は研究科ページからダウンロードできます。過去問を解く時に重要であるのは、解くたびに「解けた/解けない」ではなく、以下の3点です。
- どの分野の何が問われたか
- どの定義・定理を使ったか
- 次回同型が来たらどのようにどのくらいの時間で処理するか
これらを1枚にまとめて、“自分用の解答解説”として積み上げました。
外部受験は不安になりやすいけど、公式資料はちゃんと道を示してくれます。出題範囲が明記され、書籍リストも公開され、過去問も公開されている。これだけ揃っている試験は、正直かなりフェアです。
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